近年、九州を始めとした西日本地域では、線状降水帯の発生により同じ場所で大雨が降り続くということが多くなっています。
この線状降水帯は、通常は梅雨末期(7月中旬頃)の気圧配置の影響で発生しやすくなるといいますが、これまでは主に九州・中国地方などの西日本で発生することが多いという統計が出ています。
では、線状降水帯は関東地方でも発生することがあるのでしょうか?
線状降水帯がどのような条件で発生するかのメカニズムを確認し、関東地方でも発生するのか?線状降水帯が発生しやすい場所があるのかどうかを確認しましょう!
線状降水帯は関東地方でも発生する?
では、線状降水帯は関東地方でも発生することがあるのでしょうか?
線状降水帯は、条件さえ整えば関東地方でもどこでも発生する可能性があるようです。
線状降水帯の発生には様々な条件があります。
その時の高気圧の状態や梅雨前線の状態、梅雨前線が停滞している場所や、その地方の山地の多さなど、他にもあるのですが、線状降水帯は、様々な条件がそろえば全国どこでも発生しうる現象なのです。
しかし、前述したように、線状降水帯は九州や西日本で多く発生する傾向があり、関東地方では線状降水帯の発生による豪雨災害は多くないようです。
なぜ、線状降水帯は九州や西日本で発生しやすいと言われているのでしょうか?
線状降水帯が発生するメカニズムとは?
ここからは、線状降水帯の発生メカニズムを確認していきましょう。
そもそも、線状降水帯って何?
近年、耳にすることが多くなった線状降水帯という単語ですが、線状降水帯とはどのような言葉なのでしょうか?
次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域。
線状降水帯の多くは暖候期に発生し、大きな災害の要因となる集中豪雨を引き起こすことがある。
線状降水帯の発生には、積乱雲が関係しているということがわかりますね。
線状降水帯は、2014年に発生した広島県での大雨から注目されるようになったと言われ、2021年からは気象庁が線状降水帯が発生する予報を発表するようになりました。
気象庁の線状降水帯の予報発表については、新しく開発された線状降水帯の自動検出技術が活用されていると言われており、今後さらに高精度な予報を発表するための研究が進められているとのことです。
では、この積乱雲がどのようになると、線状降水帯が発生しやすいのでしょうか?
線状降水帯の発生メカニズム
線状降水帯の発生メカニズムには積乱雲が大きく関係していますが、大まかに書くと以下のような状態です。
- 梅雨末期などで、太平洋高気圧と黄海高気圧に挟まれ梅雨前線が停滞する
- 梅雨前線の影響で、南からの暖かく湿った空気が大量に流れ込んでくる
- 暖かく湿った空気が、山や梅雨前線に当たって上昇気流が発生し積乱雲が発生する
- 積乱雲が雨を降らせる
- 積乱雲が消える
- その場所に③の影響で再び積乱雲が発生する
- 積乱雲が雨を降らせる
- 積乱雲が消える
*以後、⑧以降は⑥からの繰り返しになります。
上記のように、様々な条件はありますが、同じ場所で積乱雲が繰り返し発生することで、線状降水帯が発生します。
線状降水帯の種類
線状降水帯には、その発生過程・構造によっていくつかの種類があると言われています。
- バックビルディング型
- バックアンドサイドビルディング型
- スコールライン型
- 破線型
この線状降水帯の種類の中で、日本でよく発生していて、大きな災害につながる可能性が高い線状降水帯は、「バックビルディング型」だそうです。
バックビルディング型線状降水帯の発生条件
では、この「バックビルディング型」の線状降水帯が多いのはなぜでしょうか?
主に発生頻度が高い九州・西日本では、地理的な条件が大きいとされています。
九州や西日本は太平洋と東シナ海に接している為、太平洋高気圧が日本列島の南に停滞した際に、高気圧の縁にそって暖かく湿った空気が日本に流れ込みます。その時、九州の西側の東シナ海上が風が流れ込む入口になってしまいます。西側には障害物となり得るものがないためと考えられています。
線状降水帯が発生しやすい場所は?
では、これまで調査してきた情報から、線状降水帯が発生しやすい場所を確認していきましょう。
線状降水帯が発生しやすい場所は以下であると言えそうです。
- 九州地方・中国地方を主とした西日本地域 …地理的な条件より
- 山沿いの地域(風下側) …暖かく湿った風が山に当たって積乱雲になるというメカニズムより
線状降水帯の発生については、気象庁が2022年6月1日より、「九州北部」など広域な地域を対象に半日程度前からの予測情報(気象情報)の提供を開始しています。
また、今後の情報改善について、線状降水帯の発生による大雨の可能性を伝える事前情報として、2024年には都道府県単位で、2029年には危険度分布の形式で市町村単位での危険度を把握できるよう、いずれも半日前からの予測情報提供を目指すとしているそうです。
また、線状降水帯の発生による具体的な雨域を伝える予測情報として、2023年には30分前を目標とした直前の予測情報を、2026年には2 – 3時間前を目標としたより早い段階で予測情報の提供を開始するとしています。
最新の技術と研究で、線状降水帯が発生する正確な予兆をつかめるようになれば、線状降水帯の発生による災害が防げる日が来るのかもしれませんね。
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