2022年7月に発生したKDDI社の大規模通信障害を受け、日本国内でもローミングを本格検討するという話題が出ていますね。
ローミングは、これまで日本から海外に行った時活躍する機能であるというイメージが強かったのですが、今回は日本国内で、非常時は別のキャリアを使って通信するという検討のようです。
しかし、日本国内でのローミングに関しては、現状は問題山積みのようでスムーズに実現できそうにないことが考えられています。
果たして、日本国内でのローミングは実現するのでしょうか?
今回は、そんな日本国内でのローミングについて、実現に向けて何が課題なのかを確認していきましょう。
日本国内でのローミング実現への課題
それでは、日本国内でのローミング実現に向けての、現時点で予想される課題について触れていきましょう。
課題①相互に繋がるシステムの構築・改修が必要
一口に「携帯電話」といっても、各キャリア(通信会社)によって違うことが多くあります。日本国内でローミングを実現しようとすると、この違いを吸収するシステムの構築・改修が必要になります。
今回例に挙げるのは、周波数帯(band)です。
総務省が各キャリアに割り振っている電波の周波数帯が違うため、キャリアごとにデータ通信に使われる周波数が違います。そのため、メーカーも機種も同じだとしても、各キャリアからそれぞれ発売されている機器には対応周波数帯(band)に違いがある場合があります。
例えば、「arrows We」というスマートフォンでは、Docomoでは「F51-B」、auでは「FCG01」、Softbankでは「A101FC」という型番で販売されていましたが、それぞれで掴める電波の周波数帯が違うため、同じ機種でも中身は違う機器となっています。
上記より、完璧に日本国内でローミングを実現しようとするならば、
- 全てのキャリアの対応周波数帯を全て網羅した完璧な機器を発売する
- かつ、国民が所持している携帯電話・スマートフォンを全てその完璧な機器に機種変更する
という対応をしなければならないのですが、現実的に無理ですよね。
ですので、今後日本国内でのローミングの実現を検討する上では、周波数帯(band)違いによって起こる不具合も含め、キャリアごとに異なる項目・設定などを頭に入れて進めなければなりません。
課題②費用負担はどうする?
上記「課題①」にて触れましたが、キャリア側としては、これから先異なった周波数帯でも通信が可能なシステムを構築する必要があります。しかし、これには莫大な費用と期間がかかります。
日本国内でのローミング実現に向けての費用を、誰がどうやって負担するのか?ということも課題ですよね。
すべてをキャリア側に負担させるのはおかしな話になりますので、例えば
- 国が一部負担(補助金?)する
- 月額の使用費用を値上げして、利用者から捻出する
などが考えられます。しかし、利用者としては、非常時にしか使わないであろうローミングのためだけに月額料金が値上げするのは納得できないですよね。
日本国内でのローミング実現に向けての費用負担については、十分な検討が必要ですね。
課題③通信料金の精算ルールは?
携帯電話やスマートフォンは、キャリアと契約しないと使用できないため、契約したキャリアに月額で料金を支払ったりしていると思います。
では、日本国内でのローミングが実現したとしたら、ローミングした分の料金はどのように精算されるのでしょうか?
例えば以下のようなケースが起こったとします。
- 契約しているA社に障害が発生しA社の回線は使用できない
- 暫定的に契約していないB社にローミングし通信可能に
- A社完全復旧のためB社ローミング終了、A社回線へ切り戻しで元通り
上記で、障害が発生してからローミングして終わるまでの利用料金に関する疑問は以下です。
- 誰が支払うんでしょうか?A社がB社に支払う?それとも利用者負担?
- 利用者負担の場合、A社に支払う?B社に支払う?
- 時間ごとに支払うのか、日割りにするのか?
- 日割りにする場合でも、どのプランを日割りにするのか?
いろいろ疑問が浮かびますよね。
ここで、楽天モバイルの例を見てみましょう。
楽天モバイルは、2020年春から自らの基地局の電波を使うキャリアとなり大手の仲間入りをしましたが、基地局が少ない間はKDDI社(au)からのローミングを行っており、楽天モバイルのエリア内だと自社回線、エリア外だとauの回線を自動的に切り替えて利用できる仕組みになっています。
楽天モバイルのこのケースの場合は、利用者ではなく楽天モバイル(キャリア)がローミングの費用をKDDI社に支払っていますので、今後日本国内でのローミングが実現するならば、キャリア間のローミングが発生した期間に応じて支払いが発生する仕組みになるかと予想します。
しかし、上記でも触れたように、「どのくらい支払うのか」なども含めて様々な検討が必要ですね。
課題④ローミング受け入れ側の通信は担保される?
日本国内でのローミングを実現させるにあたって、最も重要なのがこの課題ですね。
例えば、A社で障害発生した場合、受け入れ先となったB社やC社の通信はどうなるのでしょうか?
B社やC社にも契約者がいるわけで、その通信を担保しつつA社のユーザーの通信も補う必要があります。そうすると、B社やC社もトラヒックの輻輳などが起こり通信障害を起こしかねないですよね…
これについても、システム改修や設備増強などを実施しないといけないかもしれませんので、結局のところ費用負担が課題にもなってしまいますよね。
日本国内でのローミング実現に向けての課題はまだまだたくさんありそうですね。
ローミング以外で出来る対策とは?
日本国内でのローミング実現にはまだまだ課題が多く、10年後とかになるかもしれませんし、そもそも実現しないかもしれません。
ですので、ローミング以外に出来る障害への対策も考えておく必要もありそうです。
利用者側が出来ることは?
私たち利用者側で出来ることは、スマートフォンをデュアルSIM対応の機種に変更して、2回線契約しておくなどです。
筆者はこのパターンでなのですが、これだと、どちらかに障害が起こってももう片方で通信が可能ですよね。
国や自治体が出来ることは?
国や自治体で検討していただきたいのは、フリーwifiの拡充ですね。
障害が起こって通話が出来なくなっても、最悪データ通信が出来ればLINEなどで安否を確認することもできます。海外に比べ日本はフリーwifiが使える場所が少ないという指摘もあるようです。
また、障害が起こった際に、110番や119番に通報が出来ないケースもあったといいます。iPhoneやAndroidには、SIMカードがなくても緊急通報できる機能がありますが、日本では利用できません。
これには、総務省が定めている「事業用電気通信設備規則」が関わっています。
緊急通報を受信した端末設備から通信の終了を表す信号が送出されない限りその通話を継続する機能又は警察機関等に送信した電気通信番号による呼び返し若しくはこれに準ずる機能を有すること
要は、障害が起こった時に、回線がない状態で110番や119番の通報をしても、呼び戻し(折り返しのようなもの)が出来ないから緊急通報機能が使えないということですね。
これが出来るように法改正をする必要があるかもしれませんが、警察や消防とも関わってきますので難しい課題ですね。
今後、日本国内でのローミング実現に向けてどのような検討がされていくか注目していきたいと思います。
おさらい:KDDI社の大規模通信障害について
KDDI社の大規模通信障害については、関連記事もありますのでよろしければご覧ください。
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